直島ブログ

日本文化について、ふと思ったこと

今、料理専門学校に行く生徒の中で、和食を専攻する生徒が何パーセントくらいいるかご存知ですか?

実は、5パーセント以下です。100人生徒がいたら、たった5人しか和食を選ばないんです。

その理由は簡単です。高校を卒業するまでに、料理屋で出すという意味での会席料理のような和食を食べた事がある学生が、日本全体で何割いるでしょうか?

きっと、5パーセントどころではありません。ひょっとすると1パーセントもいないのではないでしょうか?

だとすると、和食の職人になろうとする人が少ないのも仕方のない事です。

ホタルイカの沖漬けや、野菜の炊き合わせが美味しく食べれる場所で、高校生までの子供が通えるレストランって、いったいどこにあるのでしょうか?

先日、ろ霞の姉妹店である季譜の里のスタッフが、電話で予約時にお客様から茹で蟹を注文されました。そのスタッフが働き始めて、季譜の里では茹で蟹を出した事がありません。スタッフはお客様の質問に「茹で蟹って何ですか」と聞いてしまい、酷く怒られてしまいました。

そのスタッフに後で、聞いたところ、季譜の里の試食会以外で、蟹を食べたことは人生で一度くらいしかないと言いました。

確かに、両親が旅館へ連れて行ってくれる習慣のある家庭や、冬になると蟹を食べに山陰へ行く習慣がある家庭で育たない限り、蟹を食べる機会なんて殆どないかも知れません。

僕らが、家で蟹を食べていたのは、祖父母が家で料理をしていた時期の話であり、両親の時代には、もう家庭に蟹や炊き合わせのような料理が並ぶことは無くなっていました。

高校生までで食べる美味しいものといえば、ハンバーグ、スパゲティ、焼肉、ステーキ、唐揚げと、どこにも和食の入る余地はありません。

今後、やっと日本文化を世界が求める時代が来たのに、もう目の前で日本文化が無くなろうとしています。

今、日本文化を楽しんでいるのは、本当に一部の日本人と、世界のお金持ちだけです。

ほんの少し前まで、目の前で溢れていた日本文化は、今、とてもニッチな存在となってしまっています。

これではダメだと思う今日この頃でした。

直島旅館 ろ霞・館主

直島旅館 ろ霞・館主 佐々木慎太郎
佐々木慎太郎
A&C株式会社代表取締役
湯郷温泉 季譜の里・四代目当主
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