秋も深まりゆく直島。ろ霞の自然菜園『朧月夜』も秋の装いとなって参りました。
黄昏時前は、エノコログサがいっぱいに陽を浴びて輝き出します。いわゆる「猫じゃらし」ですが、エノコログサは犬の尾に似ている事から「犬っころ草」が転じてその名前がついたと言われています。犬と猫、双方の呼び名があるのは面白いですね。
園内を散策すれば秋の草花も多く目にとまります。こちらはフジバカマ。秋の七草のひとつで、印象的な淡い紅色の花を咲かせます。中国と朝鮮半島の原産と言われており、日本には奈良時代に薬草として渡来しました。漢名では「香水蘭」とあるのですが、半乾きすると桜餅の葉のような芳香を放ちます。平安時代の女性はフジバカマの香を焚き込めて、その香りを身につけていたそうです。日本での漢字表記は「藤袴」。
秋らしいコスモスの花も咲いています。やせた土地でもよく生育するコスモスは繁殖力が強いですが、朧月夜では他の植物とバランスよく育成していました。コスモスとはラテン語で星座の世界、つまり秩序をもつ完結した世界体型としての宇宙の事を指しますが、広がるエノコログサの中に咲くその姿はまるで星々のようにも見えました。
そして、これも秋の七草であるキキョウの姿もありました。キキョウは本来9月頃までが見頃ですが、温暖な今年の気候もあってか、まだ元気に花弁を開いていました。月見台の側でひっそりと咲いています。近日中にお越しの際は、ぜひ探してみてください。
これからのろ霞周辺では、ビワが小さく愛らしい花を咲かせてくれます。11月中旬〜2月頃までと、寒い冬に直島の自然をその花で彩ってくれる貴重な存在です。朧月夜にも生育していますので、ぜひ、そのバニラのような芳香もお楽しみいただければと存じます。