ろ霞のこと
直島の県道から少し奥まった山間の地。
直島旅館ろ霞は、自然の風景に
溶け込むように佇んでいます。
季節ごとに美しい自然の姿が
楽しめる環境ですが、
なかでも溜池から立ち込めた朝霞が
悠然と流れる様は、とても神秘的です。
はるばる直島を訪れたお客様が
心安らぐひとときを過ごし
アートのもとに集い、豊かな時が紡がれる。
謂うならば、囲炉裏(いろり)のような
場所でありたい。
「ろ霞」と名付けた所以はここにあります。
霞のごとく、ゆるやかに流れる島時間とともに
ここにいて「ただ在る」をお愉しみください。




特別に美味しい、瀬戸内の魚
瀬戸内の魚が格別に美味しいことは、日本料理好きにはよく知られた話です。
その美味しさをもっと多くの人に、という想いが凝縮された料理の品々は、日本人だけでなく、海外から訪れるお客様も魅了すると確信しています。
瀬戸内の魚料理をメインに会席と寿司をおりまぜた独自のコース料理を、心ゆくまでご賞味ください。




島で過ごす「和」の時間
客室は、「和」の空間を最大限快適に過ごしていただけるようにと考えて作りました。
和という言葉が携えるのは形式でなく調和。自然を取り込み、四季を感じながら、すべての人が幸せに暮らせるような生活スタイルを目指すことが、和室の本質だと僕は思うのです。
裸で風を感じ、湯に浸かりながら自然の中で過ごす露天風呂、和室と融合するコンテンポラリーなアート作品、地産地消の味、細部の設え...。ゆっくりとした島時間の流れのもと、「ろ霞」が考える、現代の和の様式をお楽しみください。




旅人が集い交わる囲炉裏
当館の特徴といえるのが、建物の中心に据えられた屋外の囲炉裏。人は古来より火の回りに集まり、火を眺めることで目に見えない神話の世界を描いていました。
世界中から訪れた現代アートを愛する旅人たちが、火の回りに集まり、自然と語り合う場を用意することで、人とアートの関係がより身近なものになる場を作りたいと思っています。
<焚き火時間> 日没〜23:00
※亭主のお茶は無料で提供いたします
※バーメニューのご注文は21:00〜23:00となります




若手現代アーティストの発信拠点
館内随所に国内の若手現代アーティストを中心としたアート作品が展示され、半年に一度入れ替わるFeaturedアーティストによる全客室11室のための描き下ろし作品が展示販売されます。
ろ霞アートプロデューサーに後藤繁雄氏(京都芸術大学教授)が就任し、日本現代アートにおける発信拠点となることを目指しています。

自然と人間が美しく調和する里山の風景
自然と人間が美しく調和する場をつくるために、日本画家・児島慎太郎氏(岡山県倉敷市大原美術館の創始者、児島虎次郎の孫)にお越しいただき、この場所に調和する集落の絵を描いていただくことから始めました。
元々棚田のあったこの土地に自然に佇む集落をイメージすることで、「ただそこに”在る”を愉しむ場所」をつくりたいと考えました。
日本画家・児島慎太郎 作
庭園と裏山

庭園「山祉水明」
ランドスケープデザイナーYardworksさんが作庭した「山祉水明(さんしすいめい)」は、神の恵みの象徴として水田が庭に設けられ、山並みと水田のある様と砂利で見立てた枯山水の美しさを作った庭園です。法隆寺などでも用いられる白銀比によって水田と囲炉裏の配置が求められています。日本文化のミクスカルチャーの精神を基に、この地の木々や国内外の植栽を配し、直島や近隣で採れた御影石や庵治石、鍰煉瓦(からみれんが)などを使用して、この地にしかない庭園に仕立てました。
四季折々で表情を変える庭をぜひお楽しみください。


裏山「里山」
客室露天風呂から眺めることができる裏山は、華道家の萩原亮大氏プロデュースで里山の風景を復活させるためのプロジェクトです。「人の営みがあることが美しい」をコンセプトに、もともとそこに生えていた果樹を植え、いずれ土に帰る素材で演出し、畑では自然農による野菜も育てています。収穫された作物はこの土地で育ち滋味に溢れる野菜となり、まさにここでしか味わえない料理としてレストランENにて提供することで、循環して人の営みが巡る里山の風景を再興した旅館となります。
館主挨拶
アートと寄り添う
ディープな時間
僕は88年続く旅館「季譜の里」の4代目当主を務めています。旅館は中国山脈の山間にある湯郷温泉(岡山県美作市)という、1300年近くの歴史を持つ湯治場にあります。その地域は昔、鉄の産地として栄え、様々な職人文化が育まれた土地でもありました。館内には地元の職人さんが手がけた木工家具や食器が並び、ガラス作品なども多く展示していて、たくさんのお客様に喜んでいただいています。
直島で旅館をするという話は、ある大工の棟梁からいただきました。その棟梁は直島の出身なのですが、島に日本旅館がないから外国人のお客様が来ても日本の「和」を楽しんでもらえない。それが残念でならないと、仰るのです。
話を聴きながら、もし僕が世界中からお客様が訪れる直島で旅館をやるなら、日本のアート作品が広がる空間を作るだろう、という考えが頭に浮かびました。お客様は作品と過ごすなかで、小さな感動や閃き、もしくは心の静けさを感じている...。最初に思いついたのはそんなヴィジョンでした。
アートは人の心を揺さぶり、癒し、突き動かすために存在するもの。「ろ霞」では、ギャラリーや美術館での作品鑑賞とは異なる「アートと寄り添うディープな時間」を楽しんでいただけたらと思います。新しい出会いやコトが生まれるきっかけになれば何よりの幸せです。
瀬戸内の夕暮れに、
集い語らう場
直島に旅館をつくる上で忘れられない旅の思い出を、この「ろ霞」で実現しました。
東京の大学を卒業した後、僕は世界33カ国を旅しました。
東南アジアに始まり、南米ペルーはマチュピチュを見届けた2年間のさすらい。帰国は2001年のことです。
どの町も素晴らしく、数えきれないほどの思い出があるのですが、今も心に残っているのは、現地の人や旅行者たちとの会話です。それは僕にとって新しいカルチャーとの遭遇そのものでした。
時に言語の壁にぶつかりながらも、身振り手振りで想いを伝え合うようなコミュニケーションはとても刺激的で、その頃から「いつかこんな風に世界中の人が交流できる場所を作りたい」とイメージを描き初めていたように思います。
2022年4月。世界に誇るアートの島「直島」に誕生した日本旅館・ろ霞。それは、国を超えてアートを愛する人たちが集い語らう場です。
現代アートの発信拠点であり、従来の宿泊施設にはない、より創造的な体験を味わえる場となることをこれからも目指していきます。